地球にやさしいお肉とは?
牛の排泄物が地球温暖化の原因の一つと言われています。地球にやさしいお肉は温室効果ガスの発生を抑える飼料を食べている牛です。農林水産省の委託研究プロジェクトとしてスタートしました。
地球温暖化の原因
温室効果ガス
- 二酸化炭素(CO2)
- メタン(CH4)(CO2の25倍)
- 一酸化二窒素(N2O)(CO2の298倍)
- フロンガスなど
牛の排泄物中には一酸化二窒素窒素(糞尿の処理経過で生じる)、メタン(ゲップ)が含まれています。
国内の温室効果ガス総量に対して畜産関連が占める割合は1%にすぎない。しかし、世界的には地球温暖化の要因として認知されています。
一酸化二窒素関して豚や鶏ではすでに実用化されていました。2017年、肉用牛でも同じように削減しようとする研究が農林水産省の委託研究プロジェクトとして立ち上がりました。
農研機構や栃木県畜産酪農研究センターが2021年まで研究してきました。
どんな餌なのか?
アミノ酸バランス改善飼料
一酸化二窒素は糞尿に含まれる窒素化合物に由来します。餌に含まれるタンパク質を減らせば、糞尿になって出てくる窒素量を減らせ、温室効果ガスも減らせます。タンパク質は減らすけれどアミノ酸を整えることで成長や肉の生産に影響ないようにする飼料によって、体内で作られるタンパク質の量が増え、飼料のタンパク質を減らすことができます。
配合飼料の原料でタンパク質の含有量が多い大豆かすの一部をトウモロコシとバイパスアミノ酸に変えました。
バイパスアミノ酸とは、ルーメンという牛の消化器官の中で微生物に分解されず、小腸に到達しやすいものです。飼料用で市販されています。大豆かすと比べると高価だが与える量が少ないので、大豆かすよりもトウモロコシのほうが安価のため原料価格に差はないです。
研究の結果
- 糞尿に出てくる窒素が通常の餌より15%ほど減りました。
- 堆肥にする際の排出される温室効果ガスが半減しました。
2020年 農研機構から前田牧場へ研究協力を打診
牛のげっぷが温暖化を助長するという話が盛んにされていました。私たちは牛がいる農業を素晴らしいと思っています。そんなに牛を悪者にしなくてもいいじゃないか、何かできることはないかと感じていたときだったので、声をかけられてすぐに協力を決めました。
前田牧場の牛へ与えた結果
肥育や肉質に問題はなく、餌の嗜好性にも増体(成長スピード)にも、肉のランクにも問題はなかった。(20年10月~21年3月 18頭を対象に実証試験)
ブランド化に向けて
21年9月ころから約300頭に特殊飼料を与え始めました。
全頭ではなく2400頭のうち300頭にこの餌を与えています。飼料を変えることの影響をもう少し時間をかけて見極めたいと思っている為です。もともとペレット状の飼料を与えていたが、これは粉状のため対応できる給餌機が限られていることもあります。
販売スタート
2022年4月29日から販売したところ、予想以上の反響があって興味を持ってくれる方がたくさんいるとわかりました。こういうお肉が世の中に求められているだろうし、牛と人が共存するためにこういう方法があるということを知ってもらいたいです。
通常のお肉より2割ほど割高だが持続可能な畜産の実現につながることを期待しています。購入することで地球温暖化対策に貢献できると考えてくれれば嬉しいです。
環境に配慮した畜産物のトレンドが生まれれば、経営の安定につながりますし、相場に左右される輸入大豆かすを使わなければコスト計算もしやすくなると期待しています。